直江津白山の将棋よろず覚書き

将棋の魅力を、将棋関連書籍の紹介や将棋の歴史解説などを通して、お伝えしていきます。

棋書評価「3手詰ハンドブック」

今回は、「3手詰ハンドブック」(浅川書房 浦野真彦著)のブックレビューです。

 

本書の概要

本書の「はじめに」において、筆者はこう述べています。

「実戦で玉を詰まそうと思ったら、玉をつかまえるコツである詰手筋を知る必要があります。…基本的な詰手筋のほとんどは3手一組、つまり3手詰だと言っても過言ではありません。…まずは、数多くの3手詰に取り組み、詰手筋をマスターすることが終盤力アップにつながるのです」

このように述べていることから、筆者は終盤力の向上を図ろうとする初心者を主な読者層としています。

 

本書の構成は、「はじめに」の後に詰将棋のルールを説明し、その後200題の3手詰が登場します。

 

見開きに4題が出題され、ページをめくると、その4題の解答と解説が載っています。ページが透けて解答が見えるということもないので、安心して問題に取り組むことができます。

 

本書のポイント

本書の特徴は、問題のレベルが後ろに行くほど難しくなるため、解き進むうちに自然とレベルが上がるようになっていることです。

 

特に、後半の問題は、自分の駒を取らせて逆に相手を追い込むという形がほとんどです。初心者は往々にして自分の駒を大切にしがちですが、勝つためには、大駒でも捨てられるようにならなければならず、3手詰を続けることで、自分の駒を捨てるということができるようになるというわけです。

 

まとめ

将棋がうまくなるためには、詰将棋は欠かせないと多くの人が言いますが、それはなぜでしょう?

 

それは、詰将棋をすることで、頭の中で駒の動きを把握できるようになるからです。

 

詰将棋は頭の中で駒を動かします。この訓練をすることで、終盤の読み筋が自然と考えられるようになるのです。

 

一方で、「王手は追う手」という格言もあるとおり、実戦ではむやみに王手をかけると、逆につかまらなくなることが起こります。実際、実戦では多くの場合王手はかけません。それにもかかわらず詰将棋が大事なのは、自分の駒以上に相手の駒の動きが見えるようになるからです。

 

特に初心者は、自分の駒の動きばかりに目が行き、相手の駒の動きに目が行かず、「勝手読み」をしてしまいがちです。この「勝手読み」が勝利を遠ざけるのです。詰将棋は玉の逃げ方も最善手を求められるので、「勝手読み」ができなくなります。「勝手読み」を少なくするだけでも勝率が上がっていくものです。

棋書評価「最強棒銀戦法」

今回は、「最強棒銀戦法」(創元社 飯塚祐紀著)のブックレビューです。

本書の概要

本書の「はじめに」において、筆者はこう述べています。

「本書が目指したのは実用に徹することである。それにはまず、戦略的な思考を十分に把握することから始めなくてはならない」

このように述べていることから、筆者は想定読者として、将棋の経験が一定以上ある層を意識しているといえます。言い換えると、本書を使って棒銀を覚えるのではなく、既に棒銀を使っていて、さらに磨きを掛けたい人を対象としているといえます。

 

本書の構成は以下のとおり、3章立てとなっています。

 第1章:相掛かり棒銀

 第2章:矢倉棒銀

 第3章:対振り飛車棒銀

 

第1章では、「▲6六角型」・「▲4五歩型」・「▲3五歩型」というカテゴリーに分けて解説しています。

 

第2章では、「急戦型」・「飛車先不突き型」・「持久戦型」というカテゴリーに分けて解説しています。

 

第3章では、「△6五歩型」・「△5一角型」というカテゴリーに分けて解説しています。

 

本書のポイント

本書の特徴は、それぞれの章でカテゴライズされた戦型について、さらに詳細な変化の推移を解説していることです。筆者が、棒銀を指す上で、研究すべき局面を示して、優勢になる駒組みを解説しています。変化の解説の中には、詰みの局面まで解説している項目もあるので、筆者が「はじめに」で述べている、「実用に徹する」という目論見を果たした記述といえます。

 

また、それぞれの章末に復習問題が掲載されています。この問題は、「寄せ」を意識した作りとなっていますので、この問題を解けるようになることで、筆者が記述した戦型を一通りマスターしたといえるようになるわけです。

 

まとめ

本書は、棒銀戦法に磨きを掛けたい人を想定しているため、棒銀を覚えたい入門者や初心者が買うべき本ではありません。本書は、あくまで、中級者以上が買うべき本です。居飛車を勉強したい入門者や初心者は、例えば「居飛車基本戦法 創元社 高橋道雄著」といった棋書が適切かと思います。

 

本書では、随所に「端攻め」の重要性を説いています。特に相手が矢倉模様で、相手玉が3筋方面にいるときは、「端攻め」は効果を発揮します。本書の効用の一つは、この「端攻め」の重要性を認識し、実戦でも指せるような指南をしている点が挙げられます。

棋書書評「居飛車基本戦法」

今回は、「居飛車基本戦法」(創元社 高橋道雄著)のブックレビューです。

 

本書の概要

本書の想定読者は、ルールを一通り覚えた将棋入門者です。内容は、居飛車の主要な戦法についての解説です。将棋には大きく「居飛車」と「振り飛車」という戦い方があり、本書は「居飛車」側の棋書です。

 

本書の構成は以下のとおり、4章立てとなっています。

 第1章:棒銀戦法

 第2章:相掛かり腰掛け銀

 第3章:角換わり棒銀・角換わり腰掛け銀

 第4章:対振り飛車▲5七左銀戦法

 

第3章では、題名のとおり、角換わり棒銀、角換わり腰掛け銀という2つの戦法を解説しています。また第4章では、対四間飛車、対三間飛車、対中飛車と3つの▲5七左銀戦法について解説しているため、本書では7つの戦法を紹介している形になっています。

 

本書のポイント

本書の特徴は、全ての戦法について、相手を詰ます形で解説している点です。多くの棋書は、ある局面からある局面への推移を説明して、「先手優勢」や「互角」といった形勢判断だけを示して終わっています。

 

こういった形勢判断だけを示されても、将棋入門者や将棋初心者は困ってしまいます。仮に、将棋入門者や将棋初心者が、形勢判断が優勢な局面から指したとしても、そこからどうやって展開していけばいいのかわからないことがほとんどです。

 

本書では、そういった読者のために、局面の詳細な変化についての解説を省く代わりに、一局の終わりまで展開することで、どのように駒組みを進めるのかを、ストーリーとして説明することに主眼をおいています。

 

この点が類書にない特徴であり、将棋入門者や将棋初心者にとって、非常に読みやすい構成となっています。

 

まとめ

本書は、将棋入門者や将棋初心者が居飛車の戦法を勉強するのにうってつけです。本書をマスターすれば十分戦えるようになります。

 

ただし、本書の注意点として、居飛車戦法の中でも主流の戦法である「横歩取り」については解説していませんので、他書で勉強する必要があります。

 

また、本書では局面の詳細な変化についての解説が省かれているため、実戦では本書のような展開にならないことがほとんどです。特に私の経験上(本文執筆時点で4級程度)、実戦で角換わりになることはほとんどありません。(角交換される局面では「筋違い角」にされることが多いです)

 

そして、本書でも解説していますが、角換わりというのは、双方が「角換わりする」という了解がないと発生しません。なので、角換わりを覚えたいと思っても、実戦で試せないのが実情です。

 

居飛車戦法を覚える上では、本書の第4章で解説している対振り飛車戦法が最も役立つと思います。実戦でもこちらが居飛車で戦おうとすると、相手が振り飛車で迎え撃つ展開になることが多いです。対振り飛車の戦い方を覚えるという点でも、本書は非常に有用です。